分譲地のいちばん奥。
進入路に制限のある敷地。 そして、20代ご夫婦の「インナーガレージのある暮らしがしたい」という憧れ。 それが出発点でした。
敷地やご予算の条件と照らし合わせると、そのままの形で実現するには少し無理が生じます。だからといって「やめましょう。」と、憧れに蓋をするのは、私たちの設計ではありません。
ご提案したのは、"インナーガレージの利点"をカーポートに備える。と、いうこと。
既製品をそのまま置くのではなく、・建物と隣接させる・外観に馴染む素材で側面を囲い、建築として取り込む。
そうすることで、雨に濡れずに玄関までたどり着く“インナーガレージさながら”の動線を、実現することができました。
理想と現実のギャップを、知恵と工夫で整えていく。憧れを賢いバランスで形にした一邸が完成しました。
──見どころは、それだけではありません。扉を開けた瞬間、多くの方が「あ、低い。でも、なんでこんなに居心地がいいんだろう」と立ち止まる。その理由を、これからお話しします。
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“広く見せる”より“居心地を、深める。”
住宅展示場のモデルハウスは、たいてい天井が高い。吹き抜けがあって、シャンデリアが下がっていて、開放感を競い合うように設計されています。
でも、考えてみてください。本当にくつろぎを感じる場所とは、天井の高い空間でしょうか?
古い喫茶店の奥の席。旅館の踏み込みの間。焚き火を囲む、あの低い目線。
人がほっとする空間には、必ず”重心”があります。この家のLDKの天井高は、あえて2,300mmに抑えました。一般的な住宅より、約100mm低い設定です。
たった10cm。されど10cm。床に敷き詰めた三層オークの無垢板の重厚な質感と、低めの天井が組み合わさることで、空間は「広がる」のではなく「沈み込むように落ち着く」。
──これが、私たちが今回もっとも伝えたい設計思想です。「広く見せる」ではなく、「居心地を深める」。
この感覚は、写真では絶対に伝わりません。天井の高さも、床の踏み心地も、肌で測るものだからです。ぜひ、ご自身でお確かめください。
たとえばこちらの壁面。テレビ周辺にある、配線、コンセント、壁掛金具の影も視界に入ってこない。
言われてみれば数ミリの違い。ですが”あるべきものを、見えないところに隠しきる”その積み重ねで空間の印象は決定的に変わります。
間接照明のラインも、天井のフチに彫り込むよう設置。夜になれば、光源そのものは見えず、「光だけが、壁を撫でるように落ちてくる」。昼の壁と、夜の壁。まるで違う表情を見せる、二つの顔を持った居間となりました。
LDKの一角に、3畳ほどの畳スペースを設けています。ただし、ここに壁はありません。建具で閉じる和室でもありません。
では、何で居場所を分けているのか。
答えは、「天井の低さ」「畳の質感」「木の差し色」。この3つだけで、十分に”別の部屋”として成立させています。
勾配を抑えた板張りの天井が、ほんの少しだけ目線を下げてくれる。足の裏に伝わるい草の感触が、フローリングとの境界をくっきり描く。そして、桁や柱に使った木のトーンが、空間に”おへそ”のような中心を生み出す。
──結果、何が起きるか。お子様がここでお昼寝をしていても、お母さんがキッチンに立っていても、お互いの気配が消えない。広い家ほど家族がバラバラになる、というジレンマへの、ひとつの答えです。
“密度のある居場所”は、家族の距離を物理的にも、心理的にも縮めます。この感覚も、ぜひ畳の上に座って体感してください。
対面キッチンの”前”にダイニングテーブルを置くのではなく、キッチンと”横並び”に配置しました。
そうすることで、
・「出す・下げる」の無駄な歩数をゼロにする。・火から目を離さず、横を向くだけで宿題チェックが完結。・買ってきた食材も大皿も即座に置ける、 広大な「第二の調理スペース」に。
共働きで、子育てで、毎日が秒単位で過ぎていく方ほど、この「動線が短い」配置の意味が刺さるはずです。
キッチン本体は、グレートーンの石目調をセレクト。木の暖かさ一辺倒にしないことで、空間にきりっとした輪郭を持たせています。
鏡の裏にぎっしりと並んだ歯ブラシや化粧品。そんな「いかにもな生活感」を感じない洗面台。
収納のない、ただ一枚のスクエアミラー。グレーのカウンターが映えるLIXIL「カスタムバニティ」の角形ボウル。
そこにお施主様が自らセレクトしたスタイリッシュな照明器具を掛け合わせることで、より洗練された空間となりました。
朝、化粧をする。夜、歯を磨く。そんな毎日の何気ない行為が、ここなら「自分を労わる特別な時間」に変わります。生活用品を詰め込むのではなく、あえて「お気に入りのデザイン」だけを厳選して置く。
機能性は、隣の脱衣室に収納を設けることで補いました。
冒頭でお伝えした、“既製品カーポート+木の囲い”の話に戻ります。
このカーポートの屋根は、建物の屋根とそのまま連続しています。車を降りて、雨に当たることなく、土間収納を経由してリビングへ。
買い物袋を抱えた帰り道。保育園の送り迎え。雪の朝。
「家に着いてから、玄関までが遠い」というストレスを、設計の段階で消去しました。
このように憧れにそっと蓋をするのではなく「これからの暮らしにちょうどいい形」へと整えていくことも、私たちの設計における本質だと考えています。
・インナーガレージに憧れているが、予算で諦めかけている方・「広い家」より「居心地のいい家」を建てたい方・建売やパッケージ住宅では物足りない方・20〜30代、これから家づくりを始めるご夫婦
天井高2,300mmの、肩の力が抜ける感じ。無垢オークの床に、靴下越しに伝わる木目の凹凸。畳コーナーから見上げる、低い板張り天井の表情。壁掛けテレビの周囲の”何もなさ”。
これらは全て、その場の空気を吸って、はじめて分かる質感です。
2日間限定、事前のご予約は不要です。
お子様連れも歓迎です(小さなお子様は抱っこ、おんぶでお願いします)。スタッフが常駐していますが、しつこい営業は一切いたしません。
ただ、空間を歩いて、感じて、帰っていただいて構いません。この機会をご活用ください。