私は「木の家」がとても好きです。木材は表現豊かであること、そして特に自然の無垢材を利用した時には、なんとも言えない柔らかさと心地よさを感じる空間づくりができることをこれまで何度も実感してきたからです。
木には一本一本違った木目があり、節があったりします。同じ材料を与えられても造り手が違えば、また違った見え方・感じ方になるのですが、それが難しくもあり究極に面白いところだと私は思います。
木の性質をよく知っている大工さんは、その木材を納める前にどちらの向きに反っているか確認してから、これだ!という向きで納めていきます。私がこの業界に入ってすぐの頃、その仕草がやたらかっこよく見えて、わけもわからず真似した記憶があります笑。まさに職人!って感じで感銘を受けたのと同時に、木を扱うことって難しんだなあと感じたものです。
また、うちにきてくれているある大工さんは、僕がまだ駆け出しのころ、「木には元と末があって、玄関を元として和室の大事な床の間に向かって末になっていくように木材の向きを揃える。そうするといい運気が家の中を流れる、施主様にそんな家を渡したいんだ!」と語ってくれたことがあります。この話はとても鮮明に覚えていて、木材にしか表現できないことのひとつだと感じました。それから木目はもちろん、木に関する事が色々と気になるようになり、自分でも研究するようになりました。
手に取れたままに使うとそれなりに、ひと手間かけるとそれ以上に素敵な演出ができるところがやっぱり木の魅力です。人間でゆうと表情豊か、そういう人って魅力的ですよね。
そんな材料だからこそ、木はなるべく無垢材を利用したほうが家の表情も豊かになると私は思います。
無垢材は自然木であるがゆえに反ったり曲がったりするのですが、その一方で湿気を吸ったりはいたりしてくれて、室内の環境を調整してくれます。また、床板なんかで使用すると肌触りがとても気持ちがいいですし、自然木には目に見えない無数の気泡みたいな穴が開いていて、人間の足の裏の温度を跳ね返してくれることから温かさを感じることもできます。無垢の床板が冷たくなりにくいメカニズムはここにあるそうです。冬の寒さが厳しい丹後だからこそ、ぜひ使って頂きたいといつも思います。
ご家族がそれぞれの一日の務めを終えて家路についたとき、「家」という場所は一番くつろげる居場所であってほしいと考えております。玄関を開けた時にすーーっと杉やヒノキの香りが迎えてくれて、ほっこりできる無垢の木が見えるLDKでゆっくりと疲れを癒す・・・。そんなイメージが私の中にはあります。
もちろん無垢の木は柔らかいので小傷もつきやすいというデメリットもあるのですが、それを超越して癒されてもらえたら最高!みたいなエゴもあります笑。実際、私の家のLDKに貼った桜の床板は今年で11年目を迎えて小傷だらけですが、毎年心地よい足元を提供してくれているので許せてしまいます。余談ですが、こういうフィーリングで木が好きな方は、木で造った我が家にものすごく愛着がわいてくることと想像しております。
私は幼い頃から工務店の家系で育ったので、大工だった父からはいつも木くずのにおいがしていました。
和風建築の実家で柱や梁はむき出しでしたので、無意識の中で木目や節を目でおってみたり、柱から染み出ている松やにを触ってにおいを嗅いだりしていたので、知らず知らずのうちに木と触れ合う日常だったように振り返っています。そして今3代続く工務店を受け継いだ私は、やっぱり木の家に魅力を感じています。最近では、長く付き合えば付き合うほど、考えや感覚が研ぎ澄まされていくことを木と一緒に楽しんでいるような感覚でこの仕事をさせて頂いております。
木には不思議な魅力があります。少し誇張して聞こえるかもしれませんが、視覚・嗅覚・触感で癒しを感じることのできる素敵な材料資源です。そんな材料を扱ってお施主様の大切な場所を造らせて頂けることに私はとても幸せを感じております。これから先もさらに研磨を重ね、帰りたくなるような木の家を造りたいと思います。